校長会の研究 第1回「校長会とは何か」   2000.4.25

■一人一役活動推進委員会
 去る1月24日、水戸市の県青少年会館で県内の高校・特殊教育諸学校の校長らが「全国高校総体茨城県高校生一人一役活動推進委員会」設立総会を開催し、規程や役員の他、県内の全公私立高校と特殊教育諸学校に各々「一人一役活動推進委員会」を設置し、活動資金として3年間にわたり新入生から1人当たり300円を徴集すること等を決定した。
 同委員会は誤解されているような県の機関などではなく、たんなる任意団体である。各学校での組織づくりや資金集めについて決定したり、指示したりするいかなる権限も持たない。現在、6月末までに金を振り込むよう督促された各校の校長が、無理矢理集金作業を進めており、多くの学校で教職員から批判を浴びている。

■事務の初歩的なミスか?
 この「一人一役委員会」設立総会への出張に対しては、主催者である高校総体県準備委員会(会長角田芳夫副知事)から旅費が支給される旨、あらかじめ通知されていたが、古河三高の石川昌利校長(当時)は、準備委員会に対する請求手続きをしたうえで、事務室の旅費担当者に対しても県費旅費の支払を請求し、翌2月に6,025円を受領した。3月にこの事実が発覚し、現在、県監査委員が監査をすすめている。
 稲葉節生高校教育課長(当時。現在教育次長)は、3月16日県教育研修センターに県立学校校長を召集し、あいついだ高校入試でのミスについて厳重注意をおこなったついでにこの件にも触れ、こう述べた。
 「職員の旅費の二重払いという、事務の初歩的なミスがありました。これは、校長先生と事務室との連携不足により生じたものと考えております。」
 教職員の出張許可については、近年厳重なチェックがおこなわれ、生徒引率の際には定額主義の建前を崩して実費主義による減額支給をしてみたり、用務によっては出張を不許可とするなどの徹底した支出抑制策がとられている。一般の教職員の場合、「初歩的なミス」のはいりこむ余地はなく、二重請求など絶対に不可能である。今回の不正受給は、稲葉課長の言うように、本当に、「校長先生と事務室との連携不足」が原因だったのだろうか。


■校長の出張許可の仕組み
 出張については、茨城県県立学校管理規則第六章(職員の服務)第二七条(出張命令)において、「職員の出張は、校長が命ずる」こととされ、同条第二項において、「校長の県外出張のうち、引き続き3日以上のものにあつては、教育長が命ずる」と規定されている。
 修学旅行を除けば、3日以上の県外出張は稀であるから、結局のところ校長の出張のほとんどすべては、校長が自分自身に対して命じたものなのである。校長の出張の必要性の有無をチェックする者は一切存在せず、完全なフリーパスの状態となっている。
 校長以外の教職員は出張許可願文書を提出することとされているが、校長の場合は「出張記録簿」という一覧表に用務名と用務先を記入し、事務室の旅費事務担当者に示すだけで旅費の支給を受けるのである。 

■年間80日以上の出張
 昨年、県内の元高校教諭が県公文書開示制度によって県内18校の校長の年間出張日数について調査したところ、最少でも27日で最多は年間140日、18人中10人が80日以上であった(1999年6月27日『茨城新聞』)。
 古河三高校長の場合、1999(平成11)年度には92日間の出張をおこない、うち21回分については高野連およびPTAから旅費を受け取り、それ以外の71回分について、県費による出張旅費として52万2,047円を支給された。
 このうち、人事異動関係の事務や、さきに触れた3月16日の「県立学校長会議」のように、県教育委員会の指示による用務はせいぜい10回程度で、他に数回校務に関する用務が見られるものの、のこりの70日以上はそのほとんどが校長協会、高文連、高野連、PTAなどの任意団体に関係する用務であり、校長自身の判断で自ら「旅行命令」を発しておこなった出張である。
 用務別に見ると、一番多いのが「校長協会」の会合に関するもので、24回延べ30日、旅費総額は22万円以上に及ぶ。 

■「校長会」とは何か?

 「校長会」というと、何か公的な団体と思われているが、じつは法令に根拠を持たない団体、つまり任意団体に過ぎない。正式名称を「茨城県高等学校長協会」と言い、会長は土浦一高の長瀬宗男校長(元教育庁高校教育課長)である。事務所は県高校長協会のために加配された事務職員のいる水戸一高の事務室内におかれている。
 会員は県立高校の校長111名、特殊教育諸学校の校長19名のほか、私立高校の校長21名を含む総計151名である。私立高校の校長も会員であるのだから、「茨城県高等学校長協会」が県の機関などではないのは明らかである。
 会員は、年間7回の「全体会」に参加するほか、管理・財政・制度調査・生徒指導・学習指導・進路指導・給与厚生・広報の8委員会のいずれかひとつに所属し、年間3回から6回の委員会活動をおこなう。
 このほか、県北・水戸・県東・県南・県西の5地区の地区校長会のいずれかに所属し、4回程度の会合に参加する。県高校長協会は、さらに普通科部会の他、職業科別の部会、特殊教育・定通・私学など11部会を置いている。
 さらに、県高校長協会が加盟する関東地区高校長協会と全国高校長協会もそれぞれ総会・研究協議会を開催する


■校長会の会費 
 県高校長協会の会費は年額1万6,000円で、このほか地区校長会費が1万円、全国校長会会費が8,000円、同普通科部会が6,000円で、さらに各部会ごとの会費も別途徴集される。
 これらの会費は多くの場合、校長の自己負担ではなく、PTAなどの会計によって充当されている。県高校長協会の活動は、次号で見るように親睦団体としての活動や教育行政に対する圧力団体的な活動が中心であり、それに職員団体的な活動が附随する。研修団体的な活動は一部でおこなわれるに過ぎない。県内の教職員が加盟する研修目的の団体としては茨城県高等学校教育研究会があるが、加盟者の支払う会費(年額2400円)はすべて個人負担となっている。
 基本的には私的親睦団体である県高校長協会会費を、生徒の父母が教育活動のために負担しているPTA会計(ないし後援会費等)から支出することには、まったく理由がない。
 まもなく、PTA総会の季節を迎える。会計監査がおこなわれる時期でもあり、是正の措置が 講ぜられるべきであろう。

(次号では、県高校長協会の活動内容の分析をおこないます。校長および県高校長協会に関する、意見・情報をお寄せ下さい。取材の上、本連載において掲載いたします。)



もどる